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なんでオレが冬獅郎のことを好きになったかなんてわからない。
気がついたら、好き、だった。

いつ何がきっかけだったかなんて、全然覚えがないし、いくら考えても答えは出そうにない。

最初は気になる程度のもんだった。

死神達の戦闘集団の中に、小さな子供。
最初見たときはびっくりした。
(後でよく考えたら、ピンク頭の幼女もいたが…)
小さくて、細っこくて。
きれいな髪ときれいな瞳。

一番最初は、オレが迷子になった四番隊の救護詰所でのこと。
冬獅郎は右肩を深く斬られ、包帯をぐるぐる巻きにされて、個室のベッドの上で不機嫌そうに外を見ていた。
『……子供?』
と、声に出してしまった。
小さなつぶやきだったはずだが、しっかり彼の耳には聞こえていたようで、大きな目を吊り上げ、思いっきり睨まれた。
かるく挨拶をしてみたが、完全にシカトされたのを覚えている。
俺に向けられた背中があまりにも小さくて、目に焼き付いた。
次の日、ついつい気になってもう一度彼のところへ行ってみた。
乱菊さんがいた。
大人といると、よけいに小さく見える。
昨日と同じ小さな体と、きれいな髪ときれいな瞳。
そんな姿に似合わない眉間の皺。
名前を聞いた。
普段はとても冷静な行動と立ち居振る舞いだということ。
そして数多くの部下を従える隊長であること。
乱菊さんが、得意げに話すのを真剣に聞いていた俺だった。
『すげーな…お前子ど…』
『オレは子供じゃねぇ!とっとと出てけ!』
うっかり俺の口から出そうになった言葉に、眉間の皺をさらに増やし、怒鳴られた。
あっけにとられたが、後から乱菊さんに『隊長らしいわね』と言われ、別に嫌われた訳では無いことにほっとしたのを覚えている。
乱菊さんに、いろいろ聞いた。
だんだんと冬獅郎のことを知るうちに興味がわいて来たのは事実。
それはそうだろう。
あんな見た目がオレの妹よりも小さいまるで小学生が、小難しい顔をして仕事をこなしたり、自分よりもだいぶ年上の死神達に、的確に命令を出す。
そして、彼自身もとんでもない霊圧を操り、卍解まで出来るのだ。

だんだんオレは乱菊さんや他の死神から話を聞いたり、遠目で見ていたりするだけでは物足りなくなり、少しずつ声をかけたり、ちょっかいを出したりしてみるようになった。

聞けば、あの戦いが終わってから、冬獅郎は治療を受ける為に救護詰所に入院をしているらしいのだが、食事をしようとはしないらしい。

俺は、頼み込んで、冬獅郎の文と自分の分の食事を作ってもらい、彼の許しを得ずに個室に運んで、一緒に食事をしようと言ってみた。

ま、あっさり断られたが。
だが、少しは聞いていた彼の性格を利用して、負けず嫌いな所を刺激するようにからかうと、俺から奪うようにして箸を引っ掴み、不器用に箸を使って少しだけ食べてくれた。
思わずこぼれた俺の笑みに一瞥をくれると、出て行けと言われた。

冷静沈着な彼は、かなり怒りっぽいところもあるらしい。

そこまできてオレは、だいぶこの少年に興味がある自分に気がついた。
だが、その時点ではただ純粋にこの小さな死神に興味があっただけだった。

だが、オレが現世に帰る日。
怪我はなおってはいないようだったが、仕事に復帰していた彼に愛に行ったときだった。
初めて会って以来、話かけては怒鳴られるかシカトされるかだったのに、『帰る』と伝えると、小さな体から発せられる霊圧にはっきりわかるほどに動揺が感じられた。
だが、表情にはほとんど変化はなくて、気のせいかとも思った野田が、いよいよオレが背を向けて彼から離れると、その霊圧の揺れ具合が激しくなり、気のせいでは無いことをオレに知らせた。

振り向いたオレの目に映ったのは、表情こそ変えてはいないが、握りしめられた小さな拳と揺れ動く美しい瞳。
次にとった自分の行動にオレは自分で驚いた。
彼のちいさな体を全力で抱きしめていたのだから。
慌てて離れたオレは、怒鳴られるか、殴られるのを覚悟して構えてしまった。
だが、目の前の彼はうつむいて、黙ったままだった。

『ごめん』と謝ったオレに、『ばかじゃねぇの?』と小さな声で返してきた。
そのときのオレは、抱きしめてしまったことに対しての『ばか』という意味だと思っていたが、実際は、『なんでお前が謝るのか』ということだったらしい。
その真実を知ったのは、オレとあいつが『恋人』になってから。

現世に帰ったオレは、もう彼には二度と会えないと思っていた。
オレはふつーの高校生だし。
あんなに彼に興味を示したのだって、小さくて、隊長で、強くて、見た目が他と違ってきれいな色で出来ているからだと思った。
『好き』とかそんな感情とは結びつかないと決めつけていた。
オレにはロリコン趣味もないし、ホモでもない。

でも、数日たっても忘れることは出来ない。
むしろ、彼のことを考える時間は増すばかりだった。


そして、彼はやって来た。
愉快な仲間たちとともに。

一瞬声もでなかった。
涙が出そうになるのをこらえていた気がする。
驚いた。
うれしかった。
震えた。

オレはふつーの高校生だと思っていた。
ロリコン趣味でもショタ趣味でもない。
でも例外もあるみたいだ。
ホモでもないはずだ。
だが、男が好きな訳ではなく、彼だけが好きなのだから、きっとホモでもない。

冬獅郎が好きになってしまった、ちょっとかわった高校生というところ。
そう決めた。

それから、今みたいに冬獅郎とつきあえるようになるまでは大変だった。
オレの想像以上に照れ屋で不器用だった冬獅郎。
恋愛に関しての臆病っぷりにも驚いた。

ゆっくりゆっくり進めてきた関係。
関係が深まるごとに、彼はオレに対してわがままになる。
それがとてもうれしかった。
あの冬獅郎がわがままを言ってくるのは、自慢じゃないがオレだけだという自信はある。
相変わらず気分屋で、怒りっぽくて、気難しい冬獅郎だけど、オレにとっては大切な恋人。

途中あまりの扱いの難しさに、めげそうになったこともあったけど、そんな不安は一瞬で吹き飛んだ。
なんとか同じ布団で寝てくれることを了承してくれた日。
背中合わせという約束で。

だが、寝相の悪い冬獅郎だから、夜中に足や腕がしょっちゅう飛んでくる。
その日もすばらしい膝蹴りがオレの脇腹に入ってきて、驚いて起きたオレの目に移った信じられない光景。
オレの服をきゅっとつかんだ冬獅郎の手。
寝相が悪いせいで吹っ飛ばした布団が無くて寒いのか、全身をオレの体にすり寄せてくる。
額を強くオレの肩に押し付けて、すやすやと寝息をたてていた。

天使に見えた。
それは大げさかも知れないが、そんな冬獅郎の姿を見たことの無いやつに、どれだけ説明してもあのかわいさはわかってもらえないだろう。
わかってもらうつもりもないが。

そんなオレの天使が今日家に来る。
秋だから栗が食べたいと言っていた彼のために、甘栗をバケツ盛りで用意してある。
オレの部屋はもう甘い匂いが充満している。
この部屋に入ったらきっと彼は言うだろう。
『甘ったるくて気持ちわりぃ…』
と、眉間から皺が消えたとてもうれしそうな顔で。









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一ヒツ脳内はこんなんでした。
一日中こんなんでした。

こんなんボケーっと考えながら昼ご飯食ってたら、サンドイッチの中身が全部床に落ちました。
しょんぼりです。
なので、食べるのをやめました。
そしたら、仕事の途中でおなかすきまして、腹の虫がうるさかったです。





ばっか考えてる一護はいやだな。




つづき


ベッドで寝転がったまま、天井を見上げながら、階下の冬獅郎の気配に全神経を巡らす一護。
まだ、ぐずっているだろうか。
そろそろ降りてやるかな…と思ったとき、小さな足音が聞こえた。
階段をゆっくりあがってきているようだ。
だんだん音は近づき、ぐずぐずという鼻をすする音も大きくなってきた。
部屋の前までくると、足音はぴたりとやんだ。
いっこうに部屋に入ってくる様子もない。

『ぐすっ……ひっく…』

しゃくり上げる声だけが聞こえる。

(そろそろいいか…)

一護はそっとベッドから起き上がると、足音をたてずにドアへ向かう。
ゆっくり部屋のドアを開けると、そこには踞った小さな子供。
ドアが開いたと同時にビクリと顔を上げ、一度は引っ込んだらしい涙が、大きな目にみるみるたまってきている。
何か言おうとしているらしいが、口からは嗚咽しか出てこない。

『ふぇ…い……ちごぉ…』
『…おいで』
『……うぇ…』

一護は手を差し出し、小さな冬獅郎の手を引っ張ると、部屋に引き入れた。
そして自分はベッドに座り、冬獅郎を自分の前にたたせる。
両手をしっかり握りしめ、下を向いている冬獅郎の顔を覗き込んだ。
視線を合わせようとしたが、すぐにそらされてしまう。
そっぽを向いた冬獅郎。
一護はぎゅっと手に力を入れて、目の前の子供の名前を呼ぶ。

『冬獅郎?』
『………いちご…』
『ん?』
『…ごめんなさい…』
『うん』
『いちごわるくない…のに…ばかっていってごめんなさい…』
『うん』
『……おこってる?』
『…怒ってた…けど…冬獅郎、ちゃんと謝ったし、反省したろ?もう怒ってないよ』
『ほんと?』
『ああ…ほんとだ』

下から見上げてくる冬獅郎の顔が少し明るくなった。
下がりっぱなしだった眉もいつものきれいなラインになっている。
だが、遊園地に行けないことが悲しいのだろう。
もじもじと居心地悪そうにしながら、一護の顔をちらちら見たり、床を見たりと視線が定まらない。
一護は手を離し、小さな冬獅郎の体を自分の隣に座らせてやった。
そのまま頭を撫で、ゆっくりと口を開く。

『冬獅郎、明日は早起きできるか?』
『…え…?』
『明日、ちゃんと起きれたら、遊園地いこっか』
『!ほんと?おれおきる!おきるから!』

もう遊園地には行けないと思い込んでいた冬獅郎に、一護からの言葉は一瞬理解ができなかったようだ。
ぽかんと口を開け、一護の顔を凝視していたが、やっと理解してらしい冬獅郎は、ベッドから飛び降りて手を握りしめ、真剣な顔で明日の早起きを約束した。
そんなかわいらしい姿に、くすくすと笑いながら、一護は未だパジャマ姿の冬獅郎をいい加減着替えさせることにした。

『ちゃんと遊子にもあやまるんだぞ?』
『うん!あやまる!』
『せっかくお弁当つくってくれたんだから……』
『うん…』

きちんと服を着替えさせ、歯を磨いて顔を洗った冬獅郎は、ちゃんと遊子に謝りお広ご飯にお弁当を食べた。
食べ終わった冬獅郎は、起きて2時間ちょっとしかたっていないのに、満腹が原因なのか、眠そうに目をこすっている。
ここで昼寝をさせたら、夜になってまた昨夜のように寝てくれないかも…とおもった一護は、冬獅郎を無理矢理外に連れ出すことにした。

眠そうだった冬獅郎も、一護と遊びに外へ行けるとなると、眠気もとんだらしく、『はやくはやく』と一護をせかし、玄関を出て走り回っていた。

あまり疲れさすのも問題なので、少し考えた結果散歩がてら図書館へ行って絵本を借りることにした。

『こら、道路に飛び出したら危ないだろ!』
『へーきだもん!』
『ったく…』

さっきまで、しょぼくれてわんわん泣いていたとは信じられないくらいに、いつもの小生意気でわがままな冬獅郎に戻っていた。

明日もなかなか起きなかったらどうしよう…と多少不安に思いながら、大きな道路に飛び出していった子供を慌てて追いかける一護だった。




仕事でくたくたになっても、ずるずる足を引きずって、何であんな場所で予約したんだかと思うような遠いとこまでDVD取りに行って…。
映画の前売りもついでに買って…。

帰って中身見て…死ねる。
これ死ねる。
本編再生せずとも死ねる。

ローソンで予約したので、カレンダーがついてきたのですが、2009年はうはうはライフになりそうですよw

しかし、本編観ようにも力つきて無理…。

晩後はんも食べてないけど、それどころの精神状態じゃないのでもう寝よう。

これ観たら、また映画本つくりたくなるんだろうなぁ…w

しかし、サイトの方も整理しなきゃだし、うはうはばかりはしてられない。

映画館と違って、悶えながら観れるってすげーなーwww
ほんっと装丁エロいなー…このジャケ…。



夏コミまであがいて今からコピー本を出す。
諦めて大阪合わせでコピー本を出す。
それよりも次の本のネームをきりはじめたら、漫画だけで50ページ超えそうで、スパークに間に合うかわからないが、とにかく枠線とか引いてみる。
でもやっぱり無理そうなので、夏コミまであがいて…エンドレス。

あなたならどれ?(泣)





『続き』

夏祭りの会場に着いた二人。
一護は、あたりを見回し、予想以上の人出に驚いていた。
冬獅郎も多くの人が行き交う広場で、浴衣のせいもあるだろうが、既に疲れてしまっているようだ。

『冬獅郎!と、とりあえず何か食おうか?それとも金魚すくいとか、輪投げとかやるか?…あ、くじ引きもあるぞ?』
『…いーよ…』
『そんなこと言うなって…じゃあ…とりあえず輪投げ!輪投げしようぜ!』
『…え…お、おい!引っ張るなよ!』

冬獅郎の手を取った一護は、屋台の一番端に設置されている、割と規模の大きな輪投げのコーナーがある。

『よーし、冬獅郎!まずはお前やるか?』
『いいって…』
『えー…せっかくだぜ?』

一護ががっかりしたような声を出す。
その声に冬獅郎は出がけに言われた松本の言葉をふと思い出した。

(一護に嫌われる…一護が…離れて…く…?)

不安が胸に広がる。

『…やるよ…やればいーんだろ…』
『お、おう…。よし!冬獅郎、何かいいもんとれよ!』
『兄ちゃん達、一回でいいのかい?500円で3回出来るよ?お得だぜ?』

胡散臭そうな中年の男が、輪投げ一回200円なのを3回の方が得だと勧めてくる。

『どーする?冬獅郎、3回やるか?』
『いーよ…一回で十分だ…』
『だってさ!おっさん、じゃあ200円な』
『まいど…はい一回分ね』

男はそう言って冬獅郎に輪っかを3本寄越した。

『お嬢ちゃん頑張りなよ?きみにはあの人形とかがいいかな?』
『…お…じょう…ちゃん…?』
『あー…ほらほら!早く投げようぜ!』

男の言葉に、眉間にしわを寄せ、何か言いかえそうとした冬獅郎を、一護がなだめる。
せっかくのお祭りに来て早々のトラブルはごめんだった。

だが、すっかり機嫌の悪くなった冬獅郎は、輪っかを無造作に投げ、結局何も景品を貰う事が出来なかった。
はずれのおまけという事で、あめ玉を2つ貰っただけに終わってしまった。

『残念だったな』
『別に…あんなもんいらねーし』
『そか…じゃ、次どこいこっか』
『喉乾いた』

涼しくなったといってもまだまだ暑い気温。
喉が乾いたという冬獅郎の意見に従い、飲み物を変えるところを探す。
どの屋台にもそれなりに飲み物は売っていたが、一護は久しぶりにラムネが飲みたくなり、それを売っているところを探した。
しばらく歩くと、大きな容器にたくさんの氷を浮かべ、その中でラムネが何十本と冷やされていた。

『冬獅郎、コレ飲もうぜ?炭酸だけど、あんまきつくねーから、お前でも飲めんだろ』
『…ん…』

炭酸が苦手な冬獅郎。
だが、コレなら飲めるかもと思い、一護はよく冷えたラムネを2本買った。

『今開けるから、まってろ』
『ん?…あぁ』

何やらぼうっとしている冬獅郎の手に、開けたばかりでまだ勢い良く炭酸が吹き出している瓶を渡す。

『うわ…つめた…』
『うめー!やっぱ夏はコレだろ!』
『…ん…まぁまぁだな…』

飲んでみて、結構…いや、かなり好みの味だったのだが、やはり素直には言えない冬獅郎。
炭酸が飲めたことも嬉しいのに、嬉しそうな顔が出来ない。

そんな姿に苦笑しながらも、瓶を持ったまま再び散策し始めた二人。
可愛らしい恋人に視線が集まるのを誇らしげに思いつつ、さりげなく背中を支える様に手を添えた一護。
だがあっさりその手は払われ、じろりと睨まれる。

途中、金魚すくいを覗いたり、練り歩く神輿を見物したりしながら、半分程回ったところで冬獅郎の腹が鳴った。

『そろそろ何か食おうぜ!オレも腹減ったし…。お前名に食いたい?』
『何でもいい。てめえが好きなもんにすればいいだろ…』
『つまんねーこというなよ…』
『……あ…』
『ん?どした?何か欲しいもんあんのか?』

つまんないこと、と一護に言われ、またしても不安がよぎった冬獅郎は、思わず声をだしてしまった。
それを、食べたいものでも浮かんだのだろうかと、一護が冬獅郎の顔を覗き込む。

『いや…なんでもない…』
『そっか』

まだ、何か聞きたげな一護だったが、すぐにあきらめた様に視線を外し、冬獅郎を連れて、食べ物の屋台を数件回る。
歩きづらそうな冬獅郎をどこかに待たせても良かったのだが、先程からの冬獅郎に集まる視線を考えるとそれははばかられた。
少しでも声をかけられたり、万が一冬獅郎の体に触れられるようなことがあっては、半殺しにはしない自信はない。

一護の両手が食べ物で意大愛になったところで、座って食事が出来るところを探す。
なかなか頑張っている町内会のようで、きちんとした休憩スペースもあった。
簡易テントと長机、それにパイプ椅子が並べられただけの簡素なものだったが、野外の祭りでは十分だ。
テントの中は非常に混雑していたが、運良くカップルが席を立ち、開いたその場所に滑り込む事が出来た。

『食おうか、あ…甘いもんはあとな?冬獅郎綿アメとか食いたいだろ?でもすぐ溶けちまうからさ』
『ん…』

一護の心遣いに、適当に返事をした冬獅郎の心は、既に目の前の美味しそうな食べ物達。
そしてコレも一護の気遣いだろうが、冬獅郎の好きなものばかりが並んでいる。
お祭りで変える食べ物なんてそうそう種類はないし、冬獅郎の苦手なものも少ないが、例えばたこ焼きやお好み焼きには冬獅郎の嫌いな鰹節(歯にくっつくから)や、フランクフルトには一護が好きなはずのからしがついていないとか。

そんな小さな気遣いを今まではありがたいとも思わなかったが、今日は変な格好をさせられているせいか、とても気になった。
二人は向かい合わせに座っていたのだが、その状態では、取り皿の無いここでそれぞれが一つのものを食べてから、交換しなくてはならず、面倒だった。

『冬獅郎!コレうまいぞ?ほら…あっと…あぶね…おっことすとこだった…それ、こんどオレ食うよ…こっちくれ』
『ん…』

机上の食べ物が行き交う間、何度もこぼしそうになる。
結構幅の広い長机が原因だ。

『……』

なんだかもうめんどくさくなって来て、冬獅郎は一旦箸を置く。

『…ん?もう食わねーの?』
『いや…食うけど…』

食べたいが、なんだかせわしない。
そのとき、一護の隣に並んで座っていた親子が立ち上がった。
斜め向かいに座っていた冬獅郎からは、その親子がよく見えていて、ずっと視界に入っていたのだが、その親子が並んで座っていたこともあり、二人仲良く焼きそばを同じ容器から一緒に食べているのが気になっていた。
真横に座っている一護からは見えないようだったが。

しばらく黙りこくって考え込む冬獅郎。
それを不思議そうに見る一護。

ふいに冬獅郎が立ち上がった。

『どうした?冬獅郎…』
『…そっち……いっても…いいか…?』
『そっち…そっちって』
『…』

無言で一護の真横の席を指差す冬獅郎。
その一護の隣の席に移動しようかどうかでさんざん迷っていたのだが、テントの外から席を伺う人が見え、うかうかしていては一護の隣はすぐに埋まってしまうだろう。

意を決し、席を立った冬獅郎は一護の横を指差し、問うたのだ。
その顔は頬がピンクにそまっていて、化粧が相乗効果になり、とても愛くるしい。

『あぁ!もちろんじゃん!ほら冬獅郎!こっち来いよ?その方が食いやすいしな』
『…』

一護の隣に移動し、体が密着しそうなほど椅子を近づけて座る。
座ったものの、黙ったまま俯いている冬獅郎の前に一護は食べかけのものを並べ直していた。
やはり思った通り、一護との距離がぐんと近づいて、二人で食べやすいようにセッティングが出来た。

『けっこうさ、屋台にしては食いもんうまいよな?』
『…そう…だな』

『そうか?』と言おうとして、またしても自分の発言がかわいくない事に気付き、慌てて肯定した冬獅郎。
それに気付いてか、気付かないままかは分からなかったが、素直に冬獅郎の言葉に微笑んだ一護は気に入った様子のお好み焼きの容器を持ったまま、冬獅郎に勧めてくる。
数秒じっとまったが、一護がそのお好み焼きを机においてくれる気配はない。
要するに、このまま食べろという事らしい。

そんな恋人みたいな真似できるか…と思いつつ、事実恋人のようなものなのだから、コレは自然なことなのかも…と自分に言い聞かせ、冬獅郎は一護の手に乗せられたままのようきに箸を伸ばした。
箸で小さく切り分けようと思ったが、なかなかうまくいかず、悪戦苦闘していると、一護が笑いながら、容器を冬獅郎の口元へ近づけて来た。

『……』
『持っててやるから』

そう言って笑いかけてくる一護に、ちらりと視線を走らせ、観念した様にお好み焼きにかじりついた。

『うめーよな?』
『…ん…これさっきも食ったけど…』
『ちがくて…こうやってくっついて食うと美味いってことだよ』
『……』

お好み焼きを口の中に入れたまま一瞬固まる冬獅郎。
自分のしようとしている事は一護には全てお見通しだった事に気付き、途端に恥ずかしくなった。

だが、先程から停止しかけている思考回路は、一護の笑顔を見てしまうと完全にストップしてしまい、一向に動き出してはくれず、いつものような悪態が出てこない。

(…こんなかっこしてるからだ…)

軽く松本に恨みを抱きつつ、照れ隠しに一護の前に置いてあるたこ焼きに手をのばした。
その瞬間、一護の左手が優しく冬獅郎の肩に添えられ、冬獅郎は一護の方へと引き寄せられた。

『…あ…』

驚いて一護を見上げると、一護の視線は冬獅郎の後ろ、先程の親子の子が座っていた椅子にむけられていて、その椅子には老人が腰掛けようとしている所だった。
一護は老人が座るのに、冬獅郎の背中の帯が邪魔にならないようにと、さりげなく冬獅郎を引き寄せたのだ。

『……もっとこっち来れるか?冬獅郎』
『…ぅん…』

ふわりと頭上から落ちてくる一護の匂いに、鼓動が速くなるのを感じながら、冬獅郎は努めて冷静に振る舞う。
壁に隣接している一護の席は、これ以上つめる事は出来ない。
老人が快適に席を利用するには、冬獅郎が一護にもっと、それこそ密着しなければならない。
既に半分抱き寄せられている格好の冬獅郎、それにくわえ大好きな一護の匂いに頬は真っ赤に染まり、箸はいつの間にか落としてしまっていた。

『…あ…はし…』

動揺を悟られまいと、誤魔化すように箸を拾うことを口実に、一護から離れようとするが、あちこちの屋台で食べ物を買ったので、余分な箸はたくさんあった。

『ほら、新しいの。それ後で纏めてすてるからよ』
『…あ…ぅん』
『あ!そろそろくっちまわねーと、花火いい場所で見れなくなっちまう!』
『…そうなのか?』

実は冬獅郎は、花火を内心とても楽しみにしていた。
昔から好きなのだ。
誰にもいった事は無かったが。

心が少し花火に向いた事で、やや落ち着きを取り戻した冬獅郎は、一護に促される様にして、残りの食べ物を食べ始めた。

その姿を、隣の老人がとても優しい目で見ていた事に二人は気付く事はなかった。






つづくんだ!





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