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『かみなり』

今日は朝から雨。
オレと冬獅郎はせっかくの休日を家に閉じこもって過ごさざるを得ない。
昼ご飯の後は冬獅郎を昼寝させなくてはならない。
なかなか大人しくは寝てくれず、今もオレから逃げるようにおもちゃで遊んだり、家中を走り回っている。
まぁ、メシを食ってすぐだし、もう少し遊ばせておいてもいいだろうとオレは食後にいれてもらった紅茶をすすっていた。

『いちごー』
『んー?どした、ねむくなったか?』

テレビを見ながら声だけで返していると、とてとてとオレのほうによってきた冬獅郎が、腹部を押さえてオレを見上げている。

『ちがうもん…おなかいたいー』
『お腹痛い?』
『うん…いたい』
『トイレか?』
『ちがう!といれいきたくない!おなかいたい!』
『何処がいたいんだ?』

しゃがんで冬獅郎の腹の辺りを触ると、小さな手でじぶんの腹の側面にオレの手を導いてくれる。

『ここー』
『ん?横っぱらか?』
『…ぱら?』

どうやら、昼飯を食ってすぐに走り回っていたので、横腹が痛くなったらしい。
オレも小さい時は良く食後に走り回っては腹を痛くしていた。

『だーいじょうぶだ。寝ればすぐなおるぞ?』
『ほんとか?ねるとなおるのか?』

昼寝をさせるチャンスと思ったオレは、これを口実にそっと冬獅郎を抱き上げて部屋へ連れて行く。

『お前、メシ食ってすぐ走ったろ?それで腹痛くなったんだぞ?メシを食ったあとはじっとしてなきゃいけないんだぞ?』
『そう…なのか?』
『そうだ。だから、今度からはちゃんと大人しくひるねだぞ』
『…ん』

上着は脱がせ、昼寝用のTシャツを着せてから小さな体を布団に寝かせた。

『まだ腹痛いか?』
『うん…』
『目つぶって、すぐ寝ちゃえば大丈夫』
『う…ん』

そっと腹を撫でてやっていると、すぐに冬獅郎の瞼は閉じた。
すやすやという寝息をたてはじめる。

気がつくと朝から降り続いている雨は、どんどん強くなっているようだ。
しとしとと振っていたのが、今ではザーザー降りだ。
カーテンを開けて外を伺い見ると、遠くの方に稲光が見えた。

『うわ、雷じゃん…こっちくるのかな…』

耳を澄ますとゴロゴロという音も聞こえ始めている。
オレはカーテンを閉め、部屋の明かりを消した。
足音をたてないようにそっと部屋を出てリビングに降りた。
先程読みかけだった漫画を読みながらすっかり冷めてしまった紅茶を喉に流し込んだ。

つづく
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