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珍しく、一護の奴が昼寝していた。
いつもの様に窓から黒崎家に侵入…いや、お邪魔したオレは、まだまだ寒いこの時期に
毛布もかけずにベッドの上で熟睡する一護をしばらく眺めていた。

『アホ面だな…』

だらしなく開けっ放しの口元。
そう大きくもない一人用のベッドに大の字。

よほど疲れているのだろうか…。
そういえば期末テストがどーだとちょっと前に騒いでいた気がする。
そのテストが終わったのか…。

久しぶりに一護の顔でも見に来てやるかと来てやったのに、タイミングが悪かったようだ。
事前に連絡なんて、そんなこ…こいびとみたいな真似はしたくなかったし…。
別に突然行って驚かそうと思った訳でもないが…。

一護は、オレがいつ、どんな時間に突然現れても、いつも笑顔で出迎えてくれる。
宿題をやっていたり、本を読んでいたり、音楽を聴いていたりと様々だが、どんな時でもすぐにオレを優先にしてくれて、嬉しいことなのだが、すこし恥ずかしい。

ぼうっとそんなことを考えて窓枠に座ったまま一護を見下ろしていたオレは、外から吹き込んでくる風が少し冷たいことに気づいた。
直ぐさま一護の部屋に滑り込み、起こさないように細心の注意を払いながら窓を閉める。
そのままベッドの横に立ち、起きる気配もない一護の寝顔をじっと見つめた。

一護のオレンジ色の髪。
オレはその色が大好きだった。
一護のやさしさ、あたたかさが伝わってくる色。
思わずオレは、すっと手を伸ばし、その髪に触れた。
少し固めの髪を指先に絡ませて遊んでいると、一護がかすかに身じろいだ。
くすぐったかったのだろうか。
いつもは一護がオレの髪に指を絡ませながら、オレの髪の障り心地が好きだと、綺麗な銀色だと言ってくれる。
でもオレは一護のオレンジ色の方が好きだ。

しばらく遊ばせていた指を離し、ついでに一護の頬を指でかるくつついてみた。

『うー…』

軽くうなりながらあっちを向いてしまった。
そして、やはり何もかけていないから寒いのか、一護は両腕を組み広げていた足も丸めてゴロンとこちらに寝返りをうった。

『ったく…風邪ひくぞ…』

オレはぶつぶついいながら、一護の横にたたんであった毛布を広げ、一護の体にかけてやった。
そして、その場に座りベッドに寄りかかる。

『さて、どーすっかな…』

せっかく来てやったのに一護は寝ているし、かといってこれと言ってすることもない。
なんだか一護の幸せそうな寝顔をみていたら、こっちまで眠くなってきてしまった。
床にすわったまま、ベッドに頬を乗せておれはいつの間にかうとうとと眠りに落ちてしまった。



『ん…ぁ…あれ?あ、オレ寝ちまってたか…』

期末テストが終わった開放感いっぱいで帰宅したオレは、ここ数日の詰め込み式の勉強でかなり疲れがたまっていたらしく、『おにいちゃん、おつかれさま!』と遊子が作ってくれたゆず茶を飲んで部屋で一息ついてベッドに横になった瞬間眠ってしまったらしい。

『あれ?でも…毛布…』

自分の体にかけられた毛布。
ベッドに横たわった途端に眠ってしまったはずなのに、毛布がしっかりかけられている…。
かけた覚えもないのだが、寝ぼけながらもしっかり自分でかけたのだろうか?

そんなことを考えながら、ふと何かの気配を感じたオレはすっと息をひそめた。
自分以外の息づかいが聞こえる。
しかも、オレの聞き慣れた、可愛らしい寝息…。

『と…冬獅郎!』

思わず叫んだオレは、あわてて手で口を押さえた。
いつ来たのか、そして何でここで寝ているのか……。
床に足を投げ出して、頭をベッドに凭れかけさせてすやすやと寝息を立てている。

『冬獅郎…』

オレに会いにきてくれたのだろうか。
しかし、オレがうっかり眠ってしまっていたせいで、優しい冬獅郎のことだ、起こすことも出来ずに、わざわざ毛布までかけてくれて、オレが起きるまで待とうとしてくれていたのだろう。
そして自分も眠ってしまったのか…。

一連の冬獅郎の行動を想像したオレは、あまりの可愛さと冬獅郎の優しさに顔がにやけてしまうのを止められなかった。

しかしこのままでは冬獅郎が寝苦しいだろうし、寒いだろうと思ったので、オレはベッドからそっと降りて、更にそーっと冬獅郎を持ち上げ、今までオレが寝ていたベッドに横たえてやった。

毛布をかけてやりながら、あまりの可愛さにオレの頬が熱くなるのがわかる。
普段はしかめっ面で、憎まれ口ばかり叩く冬獅郎だが、こうやって寝ていると本当にただの子供に見えて愛おしくてしょうがない。

オレはお気に入りの冬獅郎の髪に指を絡ませて、柔らかい髪質を楽しんだ。
しばらくそうやっていると、冬獅郎のまつげたが震え、うっすらと開いたまぶたの中から綺麗な翡翠の瞳が揺れているのが見えた。

『いち…ご?』
『あ…ごめん…起こしちまったか?』
『ん…』

寝ぼけている時の冬獅郎は本当に可愛らしい。
小さい手で目をこすり、必死に覚醒しようとするが、どうやらこの睡魔は相当強敵らしく、冬獅郎はあきらめたように手を降ろした。
とろんとした目でオレの顔を見ているが、本当に見えているかはあやしい。

『まだ寝てていいぞ?』
『ぅん…』

冬獅郎の額を撫でながらそう言ってやると、薄く開かれていたまぶたが完全に閉じてしまった。

『オレももっかい寝よう』

オレの袖を掴んだまま、再び眠りに落ちた冬獅郎の手を引きはがすのもなんだかもったいない気がして、オレはすやすや眠る冬獅郎の横に滑り込んだ。

二人分の体温ですっかり温まった毛布が心地よくて、さっきまで眠っていたのに、オレはまたしてもすぐに眠りに落ちてしまった。



しっかり一護の服を掴んだままの冬獅郎。
そんな冬獅郎を愛おしそうに抱きしめる一護。
二人のとても幸せな昼寝。
静かな静かな部屋に、二人の心地よい寝息だけが響く。






胃が痛いのはなおったが、花粉がすげ……
雨降ったから安心してたら、部屋の中に花粉はいやがった…;;



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