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大体自販機を見るとちいちゃい日番谷君には届かないんじゃ…とほくそ笑んだりする訳です。




<自動販売機>

『ほら!冬獅郎!早く決めろって!電車来ちゃうぞ!』
『うー…ぅん』

今日は冬獅郎の新しい帽子を買ってやろうと少し離れたアウトレットモールへ行く。
そのために電車に乗るのだが、駅まで二人で歩いて、ホームまで降りたとき、冬獅郎が『のどかわいた』と言い出した。
確かに今日は少し暖かい。
しかし夕方は冷えると思っていつものように厚着させたのだが、ここまで来るのにすっかり体が暖まってしまったようだ。
一枚薄着にした一護でさえ少し暑いと感じていた。

ホームにある自販機まで行き、ジュースをどれにしようか真剣に選ぶ冬獅郎。
どうやら、リンゴジュースか桃の甘ったるいジュースで悩んでいるようだが、早くしないと電車が来てしまう。

『決まったか?』
『えっと…いちごはなににするの?』
『俺はいいよ。お前好きなのにしていいぞ。残ったらもらうから』
『うん…じゃぁ…』

もう一度冬獅郎の視線が自販機へ戻ったとき、ホームにアナウンスが響いた。

『あ!冬獅郎電車来ちまう!ほらどれにすんだ?』
『あれ!』

ちっちゃな腕を思いっきりのばして指差すが、遠すぎてよくわからない。

『どれ?』
『あれ!赤いやつ!』

どうやらリンゴにするらしい。
一護は小銭を入れ、リンゴジュースのボタンを押そうとしたが、

『おれがおすの!いちごだっこ!』
『えぇ!ったく…早くしろよ!』

もたもたしていては乗り遅れてしまう。
次の電車は各駅停車なので目的地まで時間がかかるし、そもそも待つのが嫌だった。
そんなことはおかまいなしに、だっこしろと一護の足に纏わりつく冬獅郎。

軽い体を抱き上げて、自販機の一番上段にあるリンゴジュースのボタンに冬獅郎の手が届くようにしてやる。

『やっぱりももがいいかなぁ…』

迷いだした。
近くでパッケージを見ることので来た冬獅郎は、おいしそうに缶に描かれたももの絵に心を惹かれているようだ。

『どっちでもいいから早く!あ!電車来た!』
『いちご!とどかないぃ』

電車がホームに滑り込んできたのに慌てた一護は思わず振りかえってしまい、冬獅郎の手から自販機が遠ざかる。
『ごめん』と謝りながら、もう一度冬獅郎の体を近づけてやると、うれしそうにボタンに手を伸ばした。
が、一緒に足までばたつかせてしまったため、冬獅郎の靴の先が、自販機の3段あるボタンのうち一番したのホットのはちみつレモンのボタンに当たった。

ガタンと音がして、はちみつレモンが転がり出てきた。
冬獅郎は押そうとした桃のジュースのボタンの明かりが消えてしまったのに驚き、一護お振り返る。

『いちごーおせないよぉ?』
『あぁ!もう…お前の靴があたっちまったんだよ!もうこれでいいな!電車乗るぞ!』

一護はそういって、自販機から暖められたはちみつレモンを取り出し、冬獅郎を抱えたまま電車に飛び乗った。
すぐさま扉が閉まり、電車は動き出した。

『ふぅ…間に合った…』

中途半端な時間というのもあり、車内はガラガラで、手近な座席に冬獅郎と並んで座る。

『いちご、じゅーすは?』
『ほれ…あ…これホットだった。これでいいか?』
『え…!やだ!もものは?これやだよお!』
『仕方ねえだろ?お前の靴がボタン押しちまったんだから…』
『おれじゃないもん!おれおしてないもん!』
『でも、これしかねぇんだから我慢しろよ…』
『やだ!いらない!』

ぷぅっとほっぺを膨らませてすねてしまった。
靴のまま座席によじ上って窓の外を見ている。

『こら!靴は脱げ!』
『やだ!』

暴れる冬獅郎の靴を脱がせ、一護は手の中にあるはちみつレモンのペットボトルを開けた。
一口飲んでふぅっと息をついた。

『お前も飲むか?』
『いらないもん』
『うまいぞ?』
『いらない!』
『…ったく』

すっかりご機嫌斜めの子供は窓の外に神経を集中させようとしているようだが、一護の手の中にあるはちみつレモンが気になるようで、一護はちらちらと視線を感じる。
聞いてもどうせいらないと答えるだろうから、放っておいた。
一護は久しぶりに飲んだはちみつレモンが結構美味しく感じていたので、少しずつ飲んでいたのだが、半分ほど減りさめてきてしまったので、一気に飲んでしまおうかと蓋を開けて口に運ぼうとしたときだった。

『…あ!』

かわいらしい悲鳴が聞こえた。
ふと見ると、冬獅郎が一護が飲んでしまおうとしていたジュースをじっと見ている。
眉はへの字になって、今にも泣きそうな顔だ。

『なんだ…飲みたいのか?ほら…』
『い…いらないもん…』

いらないとはいいながら、先ほどまでの勢いはなく、声が尻すぼみになっていく。

『じゃあオレが飲んじまうからな』
『……』

なにも言わず目に涙を浮かべて一護をにらむ冬獅郎。

(泣くほど欲しいのかよ…)

いったん開けたふたを閉め、座席にちょこんと体育座りしている冬獅郎を抱き寄せた。
そして、小さな両手にはちみつレモンを持たせて、

『うまいぞ?』

と言ってやると、一護をじっと見上げてから飲み始めた。
相当喉が渇いていたようで、みるみる減って行く液体。

『ふぁ…』

可愛く息を吐き出しながらペットボトルから口を離す冬獅郎。
先ほどまでのすねた様子はどこへやら、すっかりご満悦な様子で一護を見た。

『いちご!これおいしー!なんのあじ?』

初めての味に感激したように、興奮気味で訊ねてくる。

『はちみつと、レモンを混ぜたやつだよ』
『れもん?すっっぱくないよ?』
『はちみつは甘いだろ?レモンのすっぱいのが消えるんだ』

適当に説明してやると、感動したように『はちみつはまほうなの?』
とうれしそうに聞いてくる。
それに再び適当に相づちをうっていると、すっかりはちみつレモンが気に入った冬獅郎は一気に飲み干してしまった。

もっと欲しいとせがませたが、車内では買えるはずもないので、降りてから買ってやることにした。
レモンと蜂蜜を買って帰って作ってみるのもいいかもしれない。

車内はだんだん混雑してきたので、一護は冬獅郎をきちんと座らせて靴を履かせた。
はちみつレモンのおかげですっかりご機嫌の冬獅郎は、一護と手をつなぎながら目的の駅までおとなしくしていてくれた。

ご褒美についたら真っ先にはちみつレモンを買ってやろう。
一護は冬獅郎に微笑みかけた。
冬獅郎一護を見上げて満面の笑みを浮かべた。





一時期流行ったなと思って。はちみつレモン。
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