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『手作り弁当』



一護が朝起きると、昨夜一緒に眠ったはずの日番谷の姿は無く、机の上に紙切れがあり、そこにはたった一行殴り書き。

<今日は晩飯食うな>

『なんだこりゃ』

日番谷の字で、それだけが書いてあった。
裏返してみても、それだけ。

『晩飯くうな……って、あいつ今日もくるのかな…』

昨晩は疲れが溜まっていた様子の日番谷だったので、話もろくに出来ずに就寝となってしまった。
今日は少しはゆっくり出来るだろうか…。

にやける顔を手の平で叩き、朝の支度へととりかかった。


その日の昼過ぎ、日番谷は尸魂界にある自室で、そわそわと落ち着かない様子で、ちらちらと時計を気にしている。

『そろそろ時間なのに…』

約束の時間はもうすぐだ。
だが、約束した人物達の霊圧は近くには感じられない。

『ちっ…』

ここにいても落ち着かないので、自分から出向くことにした日番谷は、いつもの死覇装ではなく、普段着で自室を出た。

『あ!隊長!いま行こうとしてたのにー!』
『あぁ…暇だし、お前の事だからどーせ遅れてくるだろう?』
『んもー!そんなことないですよう!それに今日は朽木もいますもん!』
『ひ、日番谷隊長!おはようございます!』
『ん…おはよう…すまないな…』
『いえ!不肖朽木、日番谷隊長の為ならば!』
『…あぁ…』
『さ!隊長!早速作りましょうか!』

そういって松本は、日番谷の腕を掴み、ある場所へと連れて行く。
その後を朽木ルキアが、なにやや大荷物をぶら下げ、ついていった。

着いた先は朽木家の台所。
やはり大貴族の家だけあって、台所一つとってもとんでもなく広い。
大小の鍋や、包丁。
何に使うのか分からない器具まで、ピカピカに磨かれた状態で置かれている。

『なぁ松本…やっぱり…』
『どうしたんですか隊長!今日は一護の誕生日でしょう?頑張ってお弁当作るんですよね?』
『…でも…』

今日は一護の誕生日だった。
何日もかけてプレゼントにふさわしい物を探したが、忙しい身の上もあり、結局昨日まで見つける事ができなかった。
困り果てた日番谷は、一護と普段行動を共にしているルキアに相談する事にした。
ルキアは真剣に日番谷の相談に乗ってくれたが、一護が欲しがっているものは結局良く分からずじまいだった。
一護の性格からして、あまり物欲が無いというのだ。

更に困ってしまった日番谷に、ルキアはこういった。
『日番谷隊長からなら、一護の奴は何でも喜んでくれるはずですが…日番谷隊長、どうでしょう?普段しない事をしてみるというのは?』

一瞬きょとんとした日番谷だったが、そんな事を言われても何をしたらいいか分からない。
その時、どうやら途中から話を聞いていたらしい松本が現れた。

『隊長!一護にご飯着くって上げたらどうですか?手料理!』
『はぁ?んなことオレが出来る訳ねーだろ!料理なんてした事ねーし…』
『だから良いんじゃないですか!』
『そうですね、日番谷隊長!そうしましょう!この朽木もお手伝いします』
『…なに言ってんだよお前ら…』

だが、二人の口元は笑っているが、目は真剣だ。
どうやらこの、とても面白いと思われるイベントを逃してたまるか。
ということらしい。

『…わかったよ…』

ため息とともに日番谷はこの企画を了承することとなった。

一応、一護の好きなものをリサーチすべく、前日に日番谷は一護の家に行き、さりげなく好物を調べるつもりだったが、この所、仕事と一護のプレゼント探しで疲れきっていた日番谷は、一護の家に着いた途端に睡魔に襲われてしまい、気がつくと朝までぐっすり眠ってしまっていた。
結局何も聞けず、仕方がないので、ルキアと松本にメニュー作りを任せ、日番谷は作る段階から参加する事にした。

松本の考えたメニューは、かろうじてルキアが知っていた一護の好物をおり混ぜたもので、明太子入りだし巻き卵や、煮物、唐揚げ、サラダ、デザートと巻き寿司。
かなり豪華な重箱弁当になりそうだった。

『なぁ…やっぱこんなんいーよ…何か適当にいいもん食わせりゃいいだろ?れすとらんとか言うとこ連れてって…』

メニューを一瞥した日番谷は、面倒だと言わんばかりにため息をつき、あからさまに眉間のしわを増やした。
実は面倒などではなく、料理なんてした事がない日番谷。
刀は使えるが、包丁は持った事すらない。
お湯の沸かし方がわかる位だ。
だが、作れないなんて今更言えず、全身で面倒だという空気を醸し出しながら、文句を並べる。

『だめですよ!ココまできたんですから…さ!がんばりましょ!』
『材料は全部揃ってますから!日番谷隊長は安心してください』
『……はぁ…』

何を安心していいやら…日番谷はとうとう諦め、やる気の二人に従う事にした。

『じゃあ、あたしは煮物の出しとりますから、朽木は唐揚げの準備して!』
『はい!わかりました!』
『隊長は卵焼きの卵を5個割ってくださいね』
『あ…あぁ…』

日番谷は言われた通り、卵を割ろうと目の前に置かれた卵を見つめる。

(どうやって割るんだ?)

割れと言われても、やり方がわからない。
だが、松本があんなに簡単そうにあっさり言うのだから、きっと難しくはないのだろう。
だが、いくら天才といえども、経験が全くないものに関してはお手上げだった。

とりあえず、近場にあった棒で、まな板に置いた卵めがけて振り下ろした。
ぐちゃ…という耳障りな音を立てて、卵は割れた。
確かに割れた。

『ちょっと!隊長!何やってるんですか!』
『何…って、卵割った…』
『…日番谷隊長…』

まな板の上の割れた生卵と、飛び散った殻を見つめ、ルキアがやや呆れたように行きを吐いた。
それをちらりと視界の端に収め、日番谷は持っていた棒、これは麺伸ばし用の棒だったのだが、それをまな板に無造作に置いた。

『もういい…やっぱやんない』
『隊長ったら…』
『日番谷隊長!わたくしが見本を見せますから!もう一度やりましょう』

松本が口を開きかけた瞬間、ルキアが叫ぶ。
そして、卵を1つ持ち、まな板の角に軽くぶつけ、ひびの入った卵を両手で割った。
ボウルの中には、殻のかけらも入っていないきれいな生卵が入っている。

『こうやって割るのですよ。さぁ!日番谷隊長も』
『あ…あぁ…』

松本ではなくルキアに笑顔で言われてしまい、日番谷は反抗の言葉も浮かばず、しぶしぶ卵を手に取った。
見よう見まねで割ってみる。
ボウルに落ちた卵は黄身が割れてしまい、小さな殻も少し混じってしまったが、どうやら、成功したらしい。
思わず、日番谷の顔が明るくなる。

『で…できた…』

小さくつぶやかれた日番谷の言葉に、松本とルキアはあまりの可愛らしさに、ポーカーフェイスを保つので精一杯だった。
ルキアに殻を取り除いてもらってから、残りの卵も全て割る。
最後の1つは、黄身がつぶれずにきれいに割る事が出来た。

『じゃあ、隊長それをかき混ぜてください。混ぜたらこの出汁を入れて、また軽く混ぜてくださいね』
『あ…うん』

テキパキとした指示を受け、日番谷は言われた通り卵を混ぜる。

『混ぜたぞ…』
『あ…はい!』

大きなボウルを抱え、泡立つほどに混ぜた卵を見ながら日番谷がつぶやくと、他の作業に熱中していたルキアが振り返った。

『では、次は焼くことにしましょう』

そういってルキアが取り出したのは、四角い形をしたフライパン。
火にかけ、あたためる。

『日番谷隊長…どうぞ…』
『……』

小さな声でルキアが示したのは、踏み台。
日番谷はそれを凝視して固まってしまった。

『隊長!火を使うのは危ないですから、ちゃんと言う事聞いてくださいね』
『こんなもんいらねえ…』

言いながら、日番谷がフライパンの前に立つと、顔の前にフライパンが来てしまい、熱された油が日番谷の顔に跳ねた。

『っち…』
『あ!ほら、危ないですよ!日番谷隊長…コレに乗ってください』
『……』

しぶしぶ踏み台に乗り、箸とボウルを受け取る。

『んで…どうやったらいいんだ…?』
『大丈夫です!言う通りにやってください』
『あぁ…わかった』

…言う通りにやったはずなのだが…というか、日番谷の元々の素質なのか、3人で悪戦苦闘した結果、なんとか出し巻き卵のような物は出来た。
明太子を包みたかったのだが、今の日番谷には高等過ぎて、とてもじゃないが作らせる事は出来なかった。

あまりにも卵との格闘に時間がかかってしまい、気がつけば夕方だった。

『たいちょーう…もう時間無いですよー…』
『…もう…これでいい…』

松本が疲れきった声で、切った卵を重箱に詰めている。
実は、他のメニューはまだ一つも完成出来ていなくて、途中で放置されていた。

『でも…卵焼きだけってのも…ねえ…』
『そうだ…日番谷隊長!明太子を入れたおにぎりならすぐ作れます。それを作れば、とりあえず弁当の形にはなります!後は我々が後ほど差し入れという形で持って行きますから!』
『あ!そうしましょう!隊長それが良いです。早速おにぎり作ってください!』
『……わかったよ…』

あちこち指をやけどして、少し痛みもあったが、ここまで来ては仕様がない。
日番谷は小さな手で、おにぎりを作りはじめた。
幸い、だいぶ前に炊き終わっていたごはんは、程よく冷めていて、真っ赤になっている日番谷の手に、それほど負担はかけなかった。

日番谷の手で作られたおにぎりは、大人には一口サイズに見えるほど小さく、更に形もバラバラだった。
それがはずかしくて、つぶしてしまおうかと思ったが、コレが良いんです!と力説する松本の迫力に負け、ひとつひとつ重箱の卵の脇に詰めて行く。

詰め終わった重箱…といっても卵焼きとおにぎりだけなので、一段だったが…をルキアがきれいに風呂敷で包んだ。

『さぁ、隊長!そろそろ一護がお腹空かせてますよ!急いで行ってあげてください!』
『重くないですか?わたくしが運びましょうか?』
『大丈夫だ…』

まだここに残って料理を完成させるという二人を残し、日番谷は急ぎ現世へと向かった。
できたての弁当を抱える日番谷の顔が少しほころぶ。
だが、すぐにその顔は曇ってしまった。

(こんな…こんなもん…あいつ貰ってもうれしくねーよな…卵…焦げてるし…)

とりあえず慌てて出て来たものの、急に不安になって、足が止まってしまう。
じっと風呂敷を見つめ、とぼとぼと歩き出した。
晩ご飯は食べるなというメモを残してきたのだから、一護は言われた通り食べずに待っているだろう。
コレを持って行かなければ、食べる物が無い。
いや、どこか外に連れ出せばいいのだろうが、せっかくここまで頑張ったのにそんなのはくやしいし、手伝ってくれた二人にも申し訳ない気がした。

軽く行きを吐くと、決心したように日番谷は歩くスピードを上げ、一護の元へとむかった。


『おっせーなー…あいつ…』

メモの通り、晩ご飯はいらないと遊子に伝えた。
そうしたら、お祝いは明日ね!と遊子に言われた。
学校の帰りに買い食いもしなかった。
きっと日番谷が何か考えてくれているのだろうという事は、どんなに鈍感でも分かるだろう。
今日は一護の誕生日なのだから。

ぼんやりと愛しい小さな恋人の事を考えながら、今日学校で貰ったプレゼントに目をやる。
机に無造作に積まれたそれらは、一護にとって、確かに嬉しいものばかりだった。
新しい目覚まし時計や、音楽プレーヤー。
女の子達からは、手作りのジャムやお菓子までもらってしまった。
まんざらでもない気分で家に帰り、あとは、自分の誕生日を一番祝ってほしい人物を待つだけだった。

間もなく20時になろうかという頃。
腹の虫がひっきりなしに鳴き、先程から、水をがぶ飲みして耐えている一護は、そろそろいい加減何か少し腹に入れようか…と考え始めていた。

カラ…

頭が空腹の事でいっぱいだった一護は、窓が開いた音で急速に現実に引き戻された。

『冬獅郎!』
『…わりぃ…おそくなった…』
『いや…』

珍しく、遅れた事を素直に謝る日番谷に、一護はしょうしょう驚いた。
そして、きが着いたのだが、日番谷は少々緊張しているようだ。

『一護…あの…』

日番谷が口を開きかけた時、机に積んであったプレゼントが崩れた。
がさりという音に、日番谷の視線がそちらへと移る。

『……』

プレゼントを目にした日番谷は、一瞬目を見開いたが、すぐに俯いてしまい、そのまま沈黙してしまった。

『冬獅郎?どうした?』
『………』

日番谷の小さな手には、きれいな風呂敷包みが抱えられていて、明らかにそれは弁当だという事が見てとれた。
だが、日番谷はそれを一護に渡そうとはせず、立ち尽くしたまま俯いている。

『冬獅郎?それ弁当だろ?オレにくれんの?』
『…!こ…これは…』
『オレ、ちゃんとメシ食わないで待ってたんだぜ?買い食いもしなかったし。それ、オレにくれんだろ?すっげー豪華そうじゃん!どっかで買ったのか?それとも注文して作ってもらったのか?』

日番谷がまるで料理をした事が無いと知っている一護は、まさか日番谷が弁当を作る訳が無いだろうと思い込んでいるので、自分の為に豪華な弁当を買って来てくれたのだろうと予想した。
だが、それを聞いた日番谷は、やや青ざめ、一護を見つめている。

『…わりぃ…やっぱ今日は帰る…すまなかった…メシ食わせてやれなくて…この埋め合わせは必ずするから…』
『おい!冬獅郎?』

来たばかりで、突然帰ると言い出した日番谷に、一護は慌てて呼び止める。
間一髪、窓から飛び出そうとした日番谷の体を掴み、部屋に引き戻す。
その時バランスを崩した日番谷の腕から、風呂敷包みがすべり落ちた。

『おっと…』

一護は起用に右手で日番谷を抱え、左手で包みを受け止めた。

『は…はなせよ!…それ!返せ!』
『えー…オレ腹へって死にそうだもん…。これ、オレの為に持って来てくれたんだろ?』
『ダメだ!返せ!もうすぐ松本達が食いもん持ってくるから!それはオレが…!』

そこまで言って、日番谷ははっとしたように口をつぐんだ。

『もしかして…お前…これ…冬獅郎が作ったのか?』
『…う…うるさいな!いいから返せよ!』
『ホントに!ホントにお前が作ったのか?』
『…だったらなんだよ!』

一護はしっかりと抱えた風呂敷包みを見つめ、嬉しそうに何度も日番谷に確認した。
返してもらえないと分かった日番谷は、諦めて一護のベッドにあぐらをかき、開き直ったようにふてくされてしまった。
そんな日番谷を尻目に、一護は早速風呂敷を開け始め、出て来た重箱の蓋を開けた。

中には形が不揃いの小さなおにぎりがいくつか。
それから、お世辞にも上手とは言えない卵焼き。

『なぁ…これ食ってもいい?』
『…だめだ』
『なんでだよ…』
『ダメったらだめ』

先程日番谷がみてしまった、おそらくは暮らすの女の子から貰ったのであろうお菓子。
どう見ても手作りにしか見えないそれは、とても美味しそうで、きれいにラッピングされていて、日番谷は気後れしてしまったのだ。
急に自分の作った物が情けなくなってしまい、一護の前から消えたくなったのだ。

やっぱりこんな事やめれば良かった。
適当なプレゼントを用意して渡しておけばよかった。
早くこんなもの始末して、それなりの物を食べさせてやった方が良かったはずだ。

そんな事を考えているうちに、一護の手は日番谷が握ったおにぎりを掴んでいた。

『あ!食うなって言っただろ!』
『あ…ぅん…うまいぞコレ!』
『……』

一護は小さなおにぎりを一つ、あっという間に食べてしまう。
指についた米もきれいに食べて、満足そうに笑った。

『ま…まずくない…のか?』

おそるおそる日番谷が問うと、一護はきょとんととした顔をして不思議そうに日番谷を見た。

『お前…まさか、コレがまずいんじゃないかって、オレが不満でも言うと思って帰ろうとしたのか?』
『……だ…だって…』

オレ…料理なんて…した事ないし…。

最後は消え入りそうな声で、下を向いた顔は真っ赤だ。

よく考えたら、松本が炊いたごはんで、ルキアが買って来明太子。
海苔は朽木家にあったものだ。
まずくなる訳がない。

そんな可愛い心配をしていた恋人の頭を引き寄せ、額にキスを落とす。

『ばーか!そんな心配すんなって!多少まずくたって、他でもない、冬獅郎が始めて作った飯だぜ?嬉しくない訳ないじゃん!』
『一護…』
『お前も食う?うまいぜこのおにぎり』
『あ…うん…』

よく考えたら、日番谷もまた昼から何も食べていない。料理をするので精一杯で、空腹なんて感じる暇もなかった。
一護から、おにぎりを受け取り一口食べてみる。
おいしかった。
だが、日番谷には明太子は少し辛かった。
だが、腹が減っていた事もあり、程なくして食べ終えた。
一護は、そんな日番谷を優しい目で見ていたが、もう一つ、卵焼きがあるのを思い出し、手づかみでひとつ取った。

『……』

まずかった。
焦げているから苦いし、じゃり…という音がしたから、殻を噛んだのだろう。
だが、食べられないほどではないし、無関心を装いながらも、心配そうに視線を向けてくる日番谷が可愛くて、まずいなんて言える訳もなかった。

『…まずいんだろ…』

ぷいっとそっぽを向いて日番谷がつぶやいた。

『食えるって!た…確かにうまくは…ないけど…でもお前始めてつくったんだろ?上出来だよ!』
『………』

振り向いた日番谷は、少しほっとした顔をしたが、やはり美味しくはなかったという事実に、ショックを受けているようだ。

『もう…いいよ…食べなくて…おにぎりだけ食えよ…』
『ばぁか!全部食うって!残すもんかよ』
『……ごめん』
『………は?』

突然謝りだした日番谷に、一護の目が点になる。

『一護に…プレゼント何やったらいいかなんて…わかんなくて、オレ…そーゆーの苦手だし、朽木に相談して、こんなもん…作ったけど…やっぱ…失敗だった…』
『な…なに言ってんだよ!失敗なんてしてねーじゃん』
『でもまずいんだろ?』
『あーもう!冬獅郎!良いかよく聞け!オレは、別にうまいもん食いたいとか、気の利いたもん貰いたいとかなんてこれっぽっちもおもってねーよ。オレには、冬獅郎が一生懸命オレの為にコレを作ってくれた事実が、それが何よりも嬉しいんだ』
『いちご……』
『それ…これつくって怪我したんだろ?そんなにまでして作ってくれたなんて、オレてばちょー幸せもんじゃん!』

一護はいいながら、日番谷のばんそうこや包帯だらけの指を両手で優しくつつんだ。
そして、満面の笑みを日番谷に向ける。

『ありがとう!冬獅郎』
『…あ…うん…あの…』
『ん?』
『一護…誕生日おめでとう…』
『ありがとう…』

真っ赤になって、俯きながらやっとの思いで紡ぎだした言葉。
一護はたまらなくなって、日番谷の小さな体を力一杯抱きしめた。
最初は硬直していた日番谷だったが、おずおずと一護の背中に手を回し、大好きな一護の胸に顔を埋めた。


一護の部屋の外では、霊圧を消して様子をうかがっていた松本とルキアが、一護の部屋に侵入する機会をうかがっていたが、どうやら、ここで入るのは野暮というものだ…と、作って来た弁当は明日二人に食べさせる事にして、今日のところは引き返す事にした。

とても邪魔出来る雰囲気ではない二人は。
一護は美味しいおにぎりと、美味しくはない卵焼きをきれいに平らげ、日番谷は一護が学校で貰って来たお菓子を美味しそうにたべた。

その後、二人で散歩にでて、夜遅くまで歩いた。
しっかり手をつなぎながら。










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